☆虹の園☆

誰よりも愛しいから

幼い頃から見守ってきた少女は、今、一人で歩き出し、その大きく膨らんだ蕾から大輪のような花を咲かそうとしている。
誰よりも強い芯を持ち、真っ直ぐに未来を見つめて歩き続ける少女。
いつからだったのだろう。
彼女への思いが、ただの“愛情”ではなくなったのは。


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「お嬢様、そちらの荷物もお持ちしますよ」
「大丈夫よ、これくらい。静蘭だって、もう、両手いっぱいじゃないの」
自分の方こそ両手いっぱいの荷物を抱えて、それでも自分の少し前を意気揚々と歩く秀麗の後姿を見て、静蘭はクスリと穏やかに、小さく笑んだ。
御史台に入ってからというもの、張り合えるライバルができたためか、それとも自分の気持ちに整理をつけることができたのか、以前にも増して秀麗は生き生きと輝いていた。
そして、自分もまた、自分の歩む道をしっかりと見定めることができた。
もう、迷うことはない。
嘗て、静蘭にとっての秀麗は、生きる意味そのものだった。
だからこそ、失うのが怖くて、傍を離れるのが不安で、彼女を理由に彼女に甘え――――自ら歩み出そうとはしなかった。
けれど、今は。
「ね、静蘭。今日の夕食は静蘭や父様の好きな物たくさん作るから、遠慮なくいってね?」
秀麗が振り向いて笑う。
彼女の笑顔は眩しいほどに輝かしい。
「それは、とても楽しみですね」
静蘭が穏やかに応じる。
けれど、そこに含まれる感情はとても深いもの。
彼女は手を伸ばせば直ぐ届く場所にいる。
けれど、今、自分の思いを伝えることはしない。
彼女の歩む道に、少しでも影を落としたくはないから。
彼女の歩む道はいつも光り輝いていて。
その道の果てに、彼女はきっと、誰よりも美しい花を咲かせるだろう。
君が憂いなく、真っ直ぐに前を向いて歩いて行く事ができるなら――――。


この思い、今はそっとしまっておこう。
君が、誰よりも愛しいから。



☆あとがき☆

あれ?
静蘭が白い?
でもこれが私の、静蘭×秀麗のイメージです。
静蘭は秀麗と二人だけの時はとても白いのです。
純情です。
それだけ秀麗のことが大切なんだと思います。
でも、これに他人が加わると、途端に黒くなる・・・・(笑)

夢鳥



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