『兄上・・・・』
そんなかつての自分の心に初めて温もりを与えてくれたのは、自分と似た境遇の、けれど自分よりずっと直向きな心を持った弟で。
春の柔らかな日差しが冬の氷を溶かすように、次第に温かみを持ち始めた心が初めて拠り所を見つけた。
ささやかな幸せを噛み締めたくて――――この小さな温もりを守りたくて。
けれど。
幸せな日々は瞬きの間に終わりを告げ、守ることも傍にいることも許されず。
ただ一人の愛した存在からすらも引き離され――――。
母を失い、守るものも生きる意味も見出せず、逃げ場の無い闇に囚われて。
絶望と狂いそうな地獄の日々に、それでも心に宿り続けた嘗ての小さな温もりだけが、ただ自分を生かした。
それでも。
あのときの自分は生きることに疲れ、遂には生を手放そうとした。
“死んでも構うまい――――”
そう思ったときだったのだ。
自分に新たな生を吹き込んでくれたもう一つの光に出会ったのは。
「静蘭?寝てるの?珍しいわね。父様、私何かかけるもの持って来るわね」
「そうだね、秀麗行っておいで。このままでは風邪をひいてしまうから」
静蘭を起こさないように、秀麗がそうっと室から出て行くのを見送ってから、邵可は机にうつ伏せて穏やかな寝息を立てている静蘭に静かに近付いた。
柔らかな紫銀を撫ぜる手つきはとても優しいもので。
それは親が実の子にするものと何ら変わりなく。
静蘭を見つめる瞳は驚くほど深く慈愛に満ちたものだった。
――――夢を見た。
ひどく暖かくて居心地のよい。
お嬢様と旦那様と今はもういないけれど奥様と――――そして劉輝。
願わくばこの幸せが永遠に続きますように――――・・・。
☆あとがき☆
最後まで読んでくださった皆様ありがとうございました!!
実は初小説だったりするこの作品。
そう長くは無いのに、なんかシリアスになってしまいました。(汗
ほぼ静蘭の独白ですが、一度書いてみたかったんです。
静蘭の過去が暗いからこんなシリアスになったんですね〜。
とりあえず、自分に文才が全く無いことは確認いたしました。
普段からミスの多い夢鳥なので誤字・脱字等ありましたら教えてくださいませ。
夢鳥
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