琴の音色が流れている。 新年と言うことで、後宮で主上と十三姫を前に、女官達が合奏を聞かせていた。 きっかけは藍楸瑛が、クリスマスプレゼントに東国の島国の楽器の琴を、 女官達に贈った事による。 そして、正月用のかるた、羽子板も新年早々に届けられ、今年初の宴となったのだ。 「うん、美味しいぞ」 劉輝は秀麗以外は物でつられる。珍しい物に目が無い。 おせち、お雑煮、餅三昧。 酒は無いが、仙洞省で清められた藍州の真水で香ばしいお茶が各種揃えられ、 山の幸海の幸も豊富な料理が並ぶ。 女官長として、十三姫も腕を振るった。 劉輝の横に控えるのは、楸瑛と絳攸。他に男性は居ない。 (早く帰りたいぞ) 絳攸は年末に仕事を仕上げられずに居たのを捕まった。 「あら」 十三姫が隠れて見ていた珠翠の姿に気づく。 声をかけるのをためらった彼女だったが、劉輝も気づき、彼女を呼ぶ。 「珠翠」 「主上…お久しぶりです」 「うむ。元気そうで、何よりだ。少しふっくらしたのではないか」 ぎゅー。 「珠翠さんも羽子板しましょうよ!」 「十三姫」 「受けて立ってくれるでしょ? お兄様の奥方候補だもの」 奥方候補ー!? 周囲は騒然。 勝つべきか負けるべきか、珠翠は悩み。 直ぐに決着がつくかと思われた真剣羽子板勝負は、結局引き分けで。 「珠翠様って、運動神経も抜群でしたのねー、身のこなしも優雅で 非の打ち所の無いほど素敵」 女官達の厚い羨望を受けたのだった。 (やれやれ) 十三姫は、彼女を自分の横に座らせ、宴は続いたが、 今宵の主役は誰だったのか。 劉輝が、ぽつんと呟いた言葉を気にかける者は居なかったようである。 おしまい。
長月様⇒HP
velentの長月様の年賀フリー小説とイラストを頂いてきました!
珠翠がかわいーのvV(´m`)
イラストの珠翠も色使いが綺麗で素敵です。
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